こんにちは。歯科医師の佐藤佳織です。横浜でクリニックを開業し、日々多くの患者さんのお口の健康と向き合っています。
さて、最近ようやくマスクを外す機会が増えてきましたが、皆さんは鏡に映るご自身の顔を見て、どう感じていますか?
「あれ、なんだか口角が下がっている…?」
「以前より、ほうれい線がくっきりしてきた気がする…」
「マスクを外した自分の顔に、なんだか自信が持てない…」
もし、そう感じているとしたら、あなただけではありません。私のクリニックに来られる患者さんからも、ここ数年で同じようなお悩みを伺う機会が本当に増えました。長引いたマスク生活は、私たちの口元に知らず知らずのうちに影響を与えていたのです。
でも、どうぞご安心ください。そのお悩みは、お顔の「筋トレ」、特に「口元筋トレ」で改善が期待できます。
この記事では、歯科医師として口腔ケアの観点も交えながら、なぜマスク生活で口元がたるんでしまうのか、その原因から、今日からご自宅で簡単に始められる効果的なトレーニング方法まで、丁寧に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、マスクを外すことへの不安が、自信を持って笑顔になるための楽しみに変わっているはずです。一緒に、いきいきとした口元を取り戻していきましょう。
目次
なぜ?マスク生活で口元がたるんでしまう3つの理由
まず、なぜマスクをしていると口元のたるみやほうれい線が目立つようになってしまうのでしょうか。主な原因は3つ考えられます。
1. 表情筋の運動不足
私たちの顔には、30種類以上の「表情筋」という筋肉があり、それらが複雑に作用しあって豊かな表情を作り出しています。 しかし、マスクで顔の下半分が隠れてしまうと、口元を大きく動かして話したり、にっこり笑ったりする機会が格段に減ってしまいます。
日常生活で使われる表情筋は、全体の約30%程度とも言われています。 意識して動かさないと、体の筋肉と同じように、表情筋もどんどん衰えて硬くなってしまうのです。特に、口の周りをぐるりと囲んでいる「口輪筋(こうりんきん)」や、頬を支える「頬筋(きょうきん)」が衰えると、頬のハリが失われ、ほうれい線や口角の下がりにつながってしまいます。
2. 口呼吸の増加
マスクをしていると、少し息苦しさを感じますよね。そのため、無意識のうちに鼻呼吸ではなく、口で呼吸する「口呼吸」になっている方が増えています。
実はこの口呼吸、口元のたるみに直結する習慣なのです。口がぽかんと開いた状態が続くと、唇を閉じるための口輪筋が常にゆるんだ状態になり、筋力が低下してしまいます。 その結果、口元全体のしまりがなくなり、たるみを引き起こしてしまうのです。歯科医師の立場から見ても、口呼吸は口腔内の乾燥を招き、虫歯や歯周病、口臭のリスクを高めるため、注意が必要です。
3. コミュニケーションの変化
リモートワークの普及で、人と直接会って話す機会が減った方も多いでしょう。オンラインでの会話は、対面に比べて口の動きが小さくなりがちです。また、マスクをしたままでの会話では、相手に表情が伝わりにくいため、口元を意識して動かすことが少なくなります。
「話す」という日常的な行為は、私たちが思う以上に多くの表情筋を使っています。この「話す」機会の質の変化が、結果的に口元の筋力低下を招いている一因と言えるでしょう。
あなたの口元は大丈夫?衰えやすい主要な「表情筋」を知ろう
では、具体的にどの筋肉を意識すれば良いのでしょうか。ここでは、特に口元の印象を左右する代表的な筋肉をご紹介します。ご自身の顔を触りながら、場所を確認してみてください。
- 口輪筋(こうりんきん)
唇の周りをドーナツのように囲んでいる筋肉です。口を閉じたり、すぼめたり、前に突き出したりする働きがあります。多くの表情筋と繋がっているため、口輪筋が衰えると顔全体のたるみに影響します。 - 頬筋(きょうきん)
頬の深い部分にあり、口角を外側に引く働きをします。頬にハリを与え、シャープなフェイスラインを保つために重要な筋肉です。 - 口角挙筋(こうかくきょきん)
その名の通り、口角をキュッと引き上げて笑顔を作る筋肉です。この筋肉が衰えると、真顔の時に口角が下がり、「への字口」で不機嫌そうな印象を与えてしまいます。 - 舌骨筋群(ぜっこつきんぐん)
あまり聞き慣れないかもしれませんが、舌を支え、顎の下にある筋肉群のことです。この筋肉が衰えると、舌の位置が下がり、二重あごやフェイスラインのもたつきの原因になります。
これらの筋肉が、いわばお顔の「インナーマッスル」のようなもの。これらをバランスよく鍛えることが、若々しい口元への近道なのです。
今日から始める!悩み別「口元筋トレ」実践講座
お待たせいたしました。ここからは、具体的なトレーニング方法をご紹介します。どれも簡単で、テレビを見ながらでもできるものばかりです。
始める前に一つだけ約束です。必ず鏡を見ながら、正しいフォームで行うことを意識してください。 狙った筋肉がきちんと動いているか確認しながら行うことで、効果が格段にアップします。
【ほうれい線撃退】頬のハリを取り戻す「風船ぷくぷく体操」
頬の筋肉を内側からしっかり伸ばし、ほうれい線にアプローチします。
- 口をしっかり閉じ、頬を空気でパンパンに膨らませます。
- そのままの状態で、空気を右の頬に移動させ、5秒間キープ。ほうれい線を内側からアイロンがけするイメージです。
- 次に、空気を左の頬に移動させ、同じく5秒間キープします。
- 上唇と歯茎の間に空気を集め、5秒間キープ。
- 最後に、下唇と歯茎の間に空気を集め、5秒間キープ。
- これを1セットとして、1日に3セット行いましょう。
【口角キュッ】笑顔に自信がつく「ウイスキー体操」
口角を引き上げる「口角挙筋」をダイレクトに鍛えるトレーニングです。
- まず、背筋を伸ばして正面を向きます。
- 口をはっきりと動かしながら、「ウー」と言い、唇を思い切り前に突き出します。5秒間キープ。
- 次に、「イー」と言いながら、口角を真横に、できるだけ強く引きます。頬の筋肉がキュッと硬くなるのを感じながら、5秒間キープ。
- 最後に、「ス・キー」と発音するように、口角を斜め上にぐっと引き上げます。最高の笑顔を作るイメージで、5秒間キープ。
- 「ウー」「イー」「スキー」を1セットとして、1日に10セット繰り返しましょう。
【フェイスラインすっきり】歯科医も推奨「舌回しトレーニング」
道具もいらず、マスクの下でもできる万能トレーニングです。舌を動かすことで、顔の内側の筋肉(舌骨筋群など)を効率よく鍛えられます。唾液の分泌を促す効果もあり、口腔ケアとしても非常に優れています。
- 口を閉じた状態で、舌先を上の歯茎の外側に置きます。
- 歯茎の表面をなぞるように、ゆっくりと大きく「右回り」に20回、舌を回します。
- 同じように、「左回り」に20回、舌を回します。
最初は顎が疲れて大変かもしれませんが、無理のない範囲で続けてみてください。二重あごの改善や、滑舌の改善も期待できますよ。
【1日のトレーニングメニュー例】
毎日の習慣にするために、以下のようなメニューを参考にしてみてください。
| トレーニング名 | 目的 | 回数・時間 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 風船ぷくぷく体操 | ほうれい線改善、頬のたるみ予防 | 1セット × 1日3回 | ほうれい線を内側から押し出すイメージで |
| ウイスキー体操 | 口角アップ、明るい表情作り | 10セット × 1日1回 | 「スキー」の時に口角をしっかり引き上げる |
| 舌回しトレーニング | フェイスライン引き締め、口腔乾燥予防 | 左右各20回 × 1日2回(朝・晩など) | ゆっくり、大きく、歯茎をなぞるように |
筋トレ効果を最大化する3つの注意点
せっかくトレーニングを始めても、やり方を間違えると効果が出にくいばかりか、逆効果になってしまうことも。以下の3つの点に注意しましょう。
1. やりすぎは禁物!シワの原因にも
「早く効果を出したい!」と焦って、長時間やりすぎたり、力を入れすぎたりするのはNGです。 顔の皮膚はとてもデリケート。過度なトレーニングは皮膚への負担となり、かえってシワを深くしてしまう可能性があります。 大切なのは「1日数分でも、毎日コツコツ続けること」です。
2. リラックスして、正しい姿勢で
トレーニングの際は、肩の力を抜き、リラックスした状態で行いましょう。また、猫背や巻き肩の姿勢は、首から顔の筋肉を下に引っ張ってしまい、たるみの原因になります。 普段から背筋を伸ばし、顎を軽く引いた正しい姿勢を意識するだけでも、お顔の印象は変わってきます。
3. トレーニング後の保湿ケアを忘れずに
筋トレ後はお顔の血行が良くなっています。このタイミングで化粧水やクリームでしっかり保湿ケアをすることで、美容成分が浸透しやすくなります。トレーニングで肌を摩擦しないためにも、日頃からの保湿はとても重要です。
日常生活でできる!口元美人を育む「ながら習慣」
最後に、特別なトレーニング時間を取らなくても、日常生活の中で口元を鍛えるための簡単な習慣を3つご紹介します。
- 食事は「よく噛む」を意識する
柔らかい食べ物が増えた現代では、噛む回数が減りがちです。 食事の際は、一口につき30回を目安によく噛むことを意識してみてください。咀嚼(そしゃく)は、顎周りの筋肉を使う最高の「ながらトレーニング」です。 - 「口角を少し上げる」をデフォルトに
パソコン作業中やスマホを見ている時、無意識に口が「への字」になっていませんか? 普段から意識して口角を少しだけ上げてみましょう。マスクの下なら誰にも気づかれません。これだけで口角挙筋が鍛えられ、明るい印象になります。 - 舌の正しいポジション(スポット)を意識する
リラックスしている時、あなたの舌はどこにありますか? 実は、舌には正しい定位置「スポット」があります。それは、舌先が上の前歯の少し後ろの歯茎(上顎のくぼみあたり)に軽く触れている状態です。この位置に舌を置くことで、自然と鼻呼吸が促され、口輪筋のゆるみを防ぎます。ぜひ意識してみてください。
まとめ
長引くマスク生活が私たちの口元に与えた影響は、決して小さくありません。しかし、それは日々の少しの意識とトレーニングで、必ず取り戻すことができます。
- 口元の悩みは「表情筋の衰え」が大きな原因。
- 「風船ぷくぷく体操」「ウイスキー体操」「舌回しトレーニング」など、簡単な筋トレを毎日少しずつ続けることが大切。
- 「よく噛む」「口角を上げる」「舌の定位置を意識する」といった日常生活の小さな習慣が、未来のあなたの顔を作ります。
今日ご紹介したトレーニングは、どれもすぐに始められるものばかりです。まずは一つでも構いません。ぜひ、今日の夜から試してみてください。
継続は力なり、です。1ヶ月後、3ヶ月後、鏡を見るのがきっと楽しみになっているはず。自信に満ちた、あなたらしい素敵な笑顔を取り戻すために、私、歯科医師・佐藤佳織も心から応援しています。



